親愛なる物語たち

シロいぬロロとボク

 

 


(一)
 

夕日はとてもオレンジ色だった。
ボクはオレンジの中で、ロロの目を見ながら言葉を使わずに話しかけていた。
ロロもボクの目を見ていたよ。
ロロは言葉を持たないから無口に思えるけど、本当はそうじゃない。
結構多弁なんだ。
色々とボクに意見をしてくるのさ。
ボクラは、どちらが上でもどちらが下でもなかったからね。
同意するだけじゃなくて、遠慮なく言い返してくるんだ。
目を使って頷いたり、反論したりするのさ。
 


夕日はどんどん濃くなっていった。
白イヌのロロはオレンジ色のイヌになった。
ボクが見つめるロロの黒い瞳の中にもオレンジは入り込んでいた。
暫くボクとロロはオレンジ色を楽しんだ。
 


オレンジ色はとても力強くて威張っていたけど、やがて群青色に世界を譲って去って行った。
その直ぐ後には当たり前のような顔をして黒色がやってきた。
ボクとロロは、家に帰ることにした。

暗闇の中でロロは白く光って帰り道を照らしてくれた。
「ロロ、シロいぬに戻ったんだね」とボクは言った。
ロロはボクの目を見て頷いた。
 


ロロはひょうきんな奴だった。
感情を隠さない奴だった。
みんなに優しい奴だった。
特にボクには優しかったよ。
ボクラは確かに分かり合っていて、確かに愛し合っていた。
ボクはヒトでロロはイヌだけど、そんなことは問題じゃなかったよ。
生き物としての種類の違いなんて全然問題にはならなかったのさ。

ロロはオジイチャン家のイヌだったから毎日会うことはできなかったけど、夏休み中や週末には自然に囲まれたオジイチャン家で一緒に過ごしていた。
緑、青、黄色、オレンジ色、黒色とか様々な色の中で、シロいぬロロは僕をいっぱい笑わせた。
ロロはいつだって最高だった。
ボクの最高の友達だった。
あの週末もオトウチャンの車を駆け下りるボクを、ロロは尻尾を振って迎えてくれる筈だったんだけどね。


 

(二)

「とてもとても遠い昔、宇宙に散らばっている全てのものは一つだったんだよ。」
ぼーっと川を見つめる少年の後ろから、祖父は優しく言葉をかけた。
唐突に投げかけられたその言葉の意味を、彼は全く理解できなかった。
「人間も犬も猫も、全ての動物。木や花の植物。
   おまえの見ている川の水や石ころだってそうだ。
   地球、太陽、月もね。
   宇宙にある全ては一つだったんだよ。」
祖父の口から出てくる言葉は、さらに少年を混乱させた。それでも構わず祖父は言葉を続けた。
「ロロもおまえも宇宙の一部なんだよ。
   生きていても、死んでしまって土のに埋められてもね。」
少年は祖父の言葉を一生懸命に理解しようた。

「もうロロには触れられないけど、おまえの心の中にはロロがいるだろう?どうだい?」
そう言われれば・・・ロロは自分の心の中に確かにいる。
心の中だけじゃない、土の中に埋められたはずのロロが、広い庭の至る所を走り回っているのが少年には見えた。
 


「おまえとロロは、今も繋がっているんだよ。
  これからもずっと繋がっている。
  繋がり方の形が変わっただけなんだ。」
言葉の意味を掴むには少年は幼過ぎた。そ
れでも祖父の言葉は少年の心の中に流れ込み、大きな喪失感が少しだけ萎んだのを感じた。

「元々一つだったんだからね。
   お前の心が望めば、いつだって会うことができるんだよ。」
祖父は説得力のあるダミ声でそう言った・・・。

writing : イヌノラジオ
painting : setuko