親愛なる物語たち
囲炉裏端の青い犬01
僕の家には囲炉裏があって、その端には青い犬が寝そべっている。
床の上に顎を落とし、腹這いになって寝そべっている。
平和な朝の悲しいニュース
僕の庭は、今日も平和に目を覚ました様だね。
庭からの優しい光に気が付いて、愛しいベッドから起き上がり、コーヒーを淹れてテレビを点ける。
テレビは、今朝も悲しいニュースを流している。
アメリカで起こった銃の乱射事件を、美しいアナウンサーが読み上げる。
ある人種差別主義者が、「ユダヤ人は皆殺しだ!!」と叫びながら鉄の弾を撒き散らしたらしい。
綺麗な顔の彼女は、眉間に皺を寄せてその出来事を伝えてる。
折角の美しい造形も台無しだ。
しかめっ面より、君には笑顔が似合う筈だよ。
君の笑顔がみれたなら、この朝はもっと素敵なものになるだろうに。
テレビをみていた囲炉裏端の青い犬は、大きな溜息をついた。
彼は優れた五感を利用して、ニュースの内容を理解した様だ。
彼は僕に語りかけた。
「人種の壁を超えられない心があるなんて悲しいことだよ。
俺たちは種の壁さえ超えて解り合っているのにね。」
青い犬がこう言葉を並べた訳じゃない。
彼は犬だからね、人間の言葉は喋れない。
だけど僕には分かるのさ。
特別な能力じゃないよ、心と心を繋ぐだけで良いんだよ。
簡単なことさ。
「まあ、君と俺のこの世界は相変わらず平和な様だね。
今日のところはそれで良しとするよ。」
そう言った囲炉裏端の青い犬は、ゆっくりと床に顎を落として、また大きな溜息をついてみせた。
writing : イヌノラジオ
painting : が~でん