親愛なる物語たち

囲炉裏端の青い犬12

竹やぶ地蔵


おれは、囲炉裏端が好きだ。
1日の大半をそこで過ごすのさ。
もう何年もそうしている。
だけどね、この村には、可笑しな興味深い友人が沢山いるんだ。
彼らに会うために、日に一度は外に出かけるよ。

南に川が見える細い道を少し歩くと、小さな竹やぶが見えてくる。
竹やぶの中には、さらに細い道が通っていて、その道は川へと続いているんだ。
川縁に抜ける少し手前のところに、赤い頭巾とよだれかけをした地蔵様が三体並んでいる。
生い茂る竹は、陽射しから心地よく地蔵様たちを守っている。

おれは、地蔵様の笑顔が大好きなのさ。
「この村のことは、何でも知っているよ。」
と穏やかに笑っている様にも見える。
ともかく愛に溢れた素敵な笑顔だよ。
安らぎを与えてくれる笑顔さ。

おれはここで、よく昼寝をする。
竹が優しくおれを包んでくれるし、地蔵様が見守ってくれている気がするからね。

ある日、おれは地蔵様と空を飛ぶ夢をみた。
いや、飛ぶというよりも浮かんでいる感じだったな。
とても高いところから眺めると、この村の山容水態の全てが見渡せた。
そしてね、今まで気がつかなかったことを発見したんだ。

川は山と会話をし、空は地と戯れていた。
水、土、木、草、光、風、花、動物たちは、その舞台の中で自由に遊んでいた。
それぞれはとても自由なのに、その風景は一枚の美しい絵画の様にみえた。
地面に立っていた時には、バラバラに見えたそれぞれの行動は、完全な調和を生み出していた。
それは、とても美しい風景だった。

夢から戻ったおれの横には、これまで通り地蔵様が三体並んで立っていた。
「凄いだろう?素敵だろう?美しいだろう?」
三体の地蔵様は、自慢げに笑っていたよ。
赤いよだれかけを揺らしているのは、南から吹く優しい風だった。
 

 

writing : イヌノラジオ
painting:が~でん

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