親愛なる物語たち

囲炉裏端の青い犬10

撫子色(なでしこいろ)の季節
 

家の裏を流れる小川、そこを流れる水の音が、今日はやけに鼓膜を揺らす。
聞き慣れた音なのだけど、いつもよりハッキリと大きく聞こえる。
この水の音は、僕の脳みそを夜通し浄化してくれる癒しの音だ。
だけど今夜は、何故だか僕の目を冴えさせる。

親愛なるベッドから身を起こし、自由な縁側に出て行った。
時計はまさしく夜中という時間を指していた。
漆黒の中に、にじんで浮かぶ青い犬。
庭の左端に立つ大きな木の前に、彼はとても正しく座っていた。
その大きな木は、風もないのに枝を嬉しそうに揺らし、薄桃色の光を出している。

「おや、君も目を覚ましたんだね?」
気配で僕を見つけた青い犬は、そのままの姿勢で僕に話しかけた。
「水たちが、新しい季節の始まりに少々興奮しているようだね。」
青い犬は、視線をそのまま大木の中心に置いている。
「この大きな僕の友達も、明日起こる素敵なことが待ち遠しい様だよ。」
青い犬は、やっと僕の方に首を動かし、ニコッと笑った。

少々騒がしかった夜の為、次の朝の目覚めは遅かった。
いつもより暖かい太陽に促され、昼ちょっと前に目を覚まし、自由の縁側に出てみたよ。

新しい季節がやってきたんだね。
青い犬は、暖かい撫子色(なでしこいろ)の光に包まれて、
心ある庭の素敵な友人たちと、笑い声を交換しあっているよ。
 

 

writing : イヌノラジオ
painting:が~でん

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