親愛なる物語たち

囲炉裏端の青い犬08

ラジオ局ノスタルジア


小高い丘の上に腰掛けて、ラジオ局ノスタルジアにチャンネルを合わせる。青い犬も隣にいるよ。
僕と同じさ、ラジオを外で聴くのが好きなんだ。
DJの幅一(ふくいち)は、今日も絶好調だ。
素敵な言葉を瞬時に選びながら、番組を淀みなく進行させている。

リクエスト曲にまつわる思い出を、頭の中に浮かべてごらん。その懐かしい物語を、空に向かって投げるんだ。
幅一がそれをキャッチする。
そうだな、時計の長針が30度動くまで待つ必要は無いな。
割と短い時間待ち時間で、君のリクエストを、君のラジオが歌い始めてくれるよ。

ロックンロールが、ヒットチャートから姿を消してから、どのくらい経ったのだろう。リズム&ブルースは、いったい何処に行ってしまったのだろうね。
だけどラジオ局ノスタルジアでは、僕のお気に入りの楽曲が、瑞々しいままで生きている。

白い雲たちは自由に形を変えながら、無限の空を自由に旅している。ご機嫌な音楽を聴きながら、青い犬と僕はその様子を眺めている。

ラジオから流れる「トランジスタラジオ」、雲と空と太陽、それに青い犬、その他にも此処に在る全てが、僕と混ざり合って短い物語になった。

「何年か後、君はこの曲が作ってくれた今日の物語を、空に向かって投げるんだろうね。」
青い犬は、遠くを流れる川の一番先を見てそう言った。
「幅一は、きっとそれをキャッチして、この曲をまた流してくれる。そして、その日の新しい物語が生まれるのさ。」
 

 

writing : イヌノラジオ
painting : が~でん

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