親愛なる物語たち

囲炉裏端の青い犬05


もうかなり昔の話になるけど、君は覚えているかい?
ここから遥か西にある大きな国で、大きな壁が壊された。
自由を求めた人間たちが、厳つい壁を壊したのさ。
それは、とても素敵な瞬間だった。
若かった僕は、凄く興奮したものさ、「新しい自由な時代が時代が始まるんだ!」ってね。
物理的な壁の崩壊は、きっと心の壁も壊してくれる筈だった。

あれから、時間は大分前に進んだけど、自由は後戻りをしている様に感じるよ。
そこからもっと西にあるもっと大きな国では、もっと大きな壁を作ろうとしているんだ。

「ここは、良い処さ。壁が少ないからね。
 在るのは、俺たちを雨風から守ってくれる家の壁くらいだろ?
 なんて自由で素敵な風景なんだろう。
 風も気持ちよく通り抜けていくよ。」

さっきまで囲炉裏端で伸びていた青い犬は、庭で陽を浴びていた僕の隣にやってきていた。

「それにね、ここに住む人たちは、心の中にも壁を作らないだろう?
 それも、とても心地の良いことさ。
 偏見という壁がないから、お互いの心と心の間を自由に行き来出来るんだ。」

青い犬は、南から吹いてくる優しい風を、気持ちよさそうに顔の上で遊ばせていた。
 

 

writing : イヌノラジオ
painting : が~でん

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