虹かかる庭のエッセイたち

緋色の小宇宙

氷川神社の祭の露店で金魚すくいをした。
5年ほど前のことだったか。
3匹の赤い金魚がうちにやってきた。

いや、金魚といえるのか。
形は「鮒」だ。
赤いフナ。
ヒブナというヤツだ。
3~2センチの、大、中、小の3 匹のヒブナ。

中と、小は、すぐに死んでしまった。
せっかく水槽も買ったのに。
大は元気だ。
名前をつけた。
「大介」だ。

大介は、ご飯をしっかり食べて、すいすいと良く泳ぐ。泳ぐ。泳ぐ。
20センチ四方の水槽では申し訳ないくらいに。

大介がやってきて、3ヶ月くらいたった頃のことだ。
私は気がついた。
私が移動する方向に、大介が泳いでついてくるのだ。
狭い水槽の中を。
ご飯をあげる人を、金魚はちゃんと認識すると聞いたことがある。
懐くという。
こんな小さなヒブナでも、それができるのか。

離れた所から名前を呼んでみた。
「大介ー!」
すると。
反応しているではないか。
はっとしたように、私の姿をみつけて、水槽の壁まで泳いでくる。

水槽は階段の下にある。
今度は階段の上から呼んでみた。
「大介ー!」
また、はっとする大介。
…しかし、私の姿は見えない。
上を見ることをしなかった大介に、私の姿は見えない。
水槽の中を右往左往している。
「どこ?どこ??」
とでも言いたげに。
「ごめんね、ここだよ」
と、私は階段を降りて水槽をのぞき込んだ。

3センチのヒブナ。
名前は大介。
目も耳も気分も、上々だ。

 
C:miu9