虹かかる庭のエッセイたち

池波さんに最近会わない

池波さんに最近会わない。

池波さんは、ご近所の方で、おばあちゃんながら、小気味の良い品の良さがある。
切れ長の目元は、色気を感じさせる。
若い頃は、さぞかし。と思わせる艶やかな雰囲気を持っている。

いつもお姿を拝見する辺りに、日本舞踊の教室の看板がある。
もしかすると、そこの方かなのかもしれない。

たまに、近所で会って、軽く会話を交わす。
私が急ぎの時は、軽い会釈だけだったりもする。
その程度のお付き合いだけど、私は池波さんがとても好きだ。

ある時、私が池波さんと話をしていたのを見ていた、通りがかりの女性が言った。
「まあ、仲がいいのね。ちょっと気むずかしいところあるのに」
そうだろうか。
池波さんは誰にでもいつも穏やかに対応しているように見えるのだが。
別の誰かと勘違いしてるのではないか。
などと思ったりもしたが、私も池波さんとは、とりわけ親しいわけではないから、実のところはわからない。

その池波さんに最近会っていないのだ。
この暑さで体調を崩したりしていないだろうか。
とても心配なのだ。

だが、それは杞憂だった。
いつもの日本舞踊の先生の家の前で、池波さんと出会ったのだ。
よかった。
お元気そうだ。
でも、やはり、ちょっとお疲れかな。
毛艶が、イマイチみたいだ。
ミケ模様の、黒いところが、いつもはもっと艶々だった気がする。
「池波さん、良かった、お元気でしたか?」
と、私が話しかけると
「にゃ」
と小さく返事をしてくれた。

池波さんは、いくつか名前があるようだ。
「池波さん」は私がつけた名前だ。
彼女は、「池波志乃」によく似ているのだ。

 
c:miu9