虹かかる庭のエッセイたち

しましまネコの薄情

ネコは愛情が薄い。
そんな言葉を聞いたことはないか。
ネコは、家に付く。
そんな言葉も。

「まい」は、しましまのネコだ。
「まい」がどこで生まれたのか、どうやって暮らしていたのか、誰も知らない。
ある日、突然、家に上がり込んできた。
私の家に。
勝手に家の階段を上がってきたしましまのネコと、私は目が合った。
「今日から、お世話になります」
しましまのネコは、軽く会釈をした。

まいは、不思議なほど頭の良いネコだった。
「ちょっと寝るから、1時間後に起こして」
そう言いつけると、きっかり1時間後に、私を起こしにやってきた。
最初はゆさゆさ揺さぶって。
それでも起きないと、髪の毛を口にくわえて引っ張った。

「6時に帰るよ」
そう言って出かけると、駅の改札の近くの電信柱の影で、6時少し前から、私を待っていた。

寝るときは、毎日、私の右腕と脇腹の間にすっぽり挟まった。

まいは、私の側を離れなかった。
いつでもぴったり寄り添っていた。

そんな「まい」が、私の側から離れる時があった。
その日は、終日、私の元から不在になる。
家族の誰かが寝込んでいる日だ。
まいは、寝込んでいる人の枕元に、「ネコの正座」箱座りで、じっとしている。
くつろいだふうはなく、姿勢を崩さず。
まるで、病から人を守るかのよう。
緊張感を持ち続ける。
とても静かに。
ずっと。

ネコは愛情が薄い。
ネコは、家に付く。
この言葉を言い始めた人が誰なのかは知らないが、わかることが1つだけある。
その人は、ネコと暮らしたことがない人だろう。

 
C:miu9